「本をたくさん読んだことも、伝えたいのですが」
「私の育った家庭について、書いた方がよいでしょうか」
「父親が清書した方が、熱意は伝わりますか」
願書の時期になると、こうしたご相談をいただきます。
お子さまのために、できることを一つでもしておきたい。
日々お話を伺っていると、そのお気持ちがよく伝わってきます。
ただ、伝えたいことが増えるほど、学校から尋ねられていることから離れてしまうこともあります。
迷ったときは、もう一度、設問を読んでみてください。
「何を書けばよいか」の前に、「何を尋ねられているか」を確かめる。そこから、願書を考えていきましょう。
慶應義塾幼稚舎の設問から考えること
①お子さまが有していると思われる資質や能力について
お子さまのどのようなところを、その子の資質や能力として捉えているでしょうか。
「好奇心があります」「粘り強い子です」と書くだけでは、お子さまの姿までは伝わりません。
何に興味を持ち、どのように行動したのか。うまくいかなかったとき、どうしたのか。
普段の暮らしを振り返ると、その言葉を裏づける出来事が見つかると思います。特別な実績を探す前に、いつものお子さまの姿を思い返してみてください。
②子育てにあたって、福澤諭吉の著作を読んで感じたことについて
ここで尋ねられているのは、本の内容ではなく、ご自身の子育てと重ねて感じたことです。
ご家庭で大切にしてきたことと重なったのか。それとも、お子さまへの接し方を考え直すきっかけになったのか。
心に残った箇所を読み返しながら、「なぜ、自分はここに心を動かされたのだろう」と考えてみてください。
著作を引用する場合は、設問の指示に従い、出典を明記しましょう。
慶應義塾横浜初等部の設問から考えること
①志望理由について お子さまの様子や家庭の方針に触れながら、学校の「特にどの点」に共感したのかが問われています。
学校の魅力をいくつも並べるより、ご家庭がとりわけ大切だと感じた点を中心に書くと、志望理由が伝わりやすくなります。
「この教育に共感したのは、わが家でこんなことを大切にしているから」
そのつながりを、ご自身の言葉で伝えてください。
②『福翁自伝』を読んで共感した部分と、その理由について
共感した部分を「複数箇所」挙げるよう求められています。複数とは、二箇所以上のことです。
数を増やすことよりも、それぞれについて、なぜ共感したのかを丁寧に考えましょう。ご自身の子育ての経験と照らし合わせると、理由がはっきりしてくることがあります。
また、この設問には、生成AIの使用や第三者への依頼を行わず、保護者ご本人が考えた内容を書くよう明記されています。
何を書くかだけでなく、どのように取り組むかについての指示も、しっかり守りましょう。
生成AIが身近になった今、ご家庭の言葉で伝えること
今年の願書に向き合う中で、生成AIについての学校の考えが、以前よりはっきり示されるようになったと感じています。
聖心女子学院初等科の学校説明会でも、生成AIによって願書からご家庭の考えが見えにくくなっていることや、面接で直接お話を伺うことを重視するというお話がありました。
文章が整っていても、「なぜ、そうお考えになったのですか」と尋ねられたときに、ご自身の言葉で話せなければ、思いは十分に伝わりません。
少し不器用な言葉でも、お子さまと過ごしてきた方にしか書けないことがあります。
その言葉を、大事にしていただきたいと思います。
「本を読み込んだことを、アピールしたいのですが」
学校を知ろうと本を読み、研究を重ねてこられた時間は、大切なものです。
願書では、そこから一歩進んで、「読んで何を感じたか」を伝えてみてください。
例えば、学校の教育方針に「本来あるべき学習」という言葉があったとします。
その言葉をそのまま使う前に、「わが家では、どのような学びを大切にしたいのだろう」と考えてみる。そして、普段のお子さまとの関わりを振り返ってみる。
学校の考えと、ご家庭が大切にしていること。そのつながりが見えてくると、志望理由も具体的になります。
「医療家庭で育ったことは、書いた方がよいでしょうか」
医療関係の家庭で育ったというだけで、入試に有利になるとは言い切れません。
書くかどうかは、その経験が、今の子育てにつながっているかを考えてみてください。
命を大切にすること。人のために力を尽くすこと。任されたことに責任を持つこと。
ご自身が育つ中で受け取ったものを、今、お子さまにどのように伝えているでしょうか。
そのつながりを具体的に書けるのであれば、ご家庭を知っていただくお話になります。職業や家族の経歴を、無理にアピール材料にしなくても大丈夫です。
「父親が清書した方が、熱意は伝わりますか」
保護者氏名欄や清書については、まず募集要項と記入上の注意を確認してください。
代表者名を書く欄なのか、父母それぞれの氏名を書く欄なのか。用紙の指示に沿って記入しましょう。
清書する方に指定がなければ、読みやすく丁寧に書ける方が担当されてよいでしょう。「父親が書けば熱意が伝わるのでは」と、気負う必要はありません。
それよりも、書いた内容をご夫婦で一緒に読み返す時間をつくってみてください。
なぜ、この学校を選んだのか。
お子さまのどのような姿を大切にしているのか。
これから、どのように育ってほしいのか。
言葉を一字一句そろえる必要はありません。お互いの考えを知り、それぞれがご自身の言葉で話せることが大切です。
願書に書くことは、毎日の中にあります
「こんなことを書いてもよいのでしょうか」
そう言いながら、保護者様が話してくださる何気ない出来事に、お子さまらしさや、ご家庭の温かさが表れていることがあります。
カレイドスコープ幼児教室では、まず、普段のお子さまのお話を伺いたいと思っています。
何を喜び、何に夢中になっているのか。どんなことで困り、そのとき、保護者様はどのような声をかけてこられたのか。
そうしたお話を通して、お子さまへの思いや、ご家庭が大切にしていることを一緒に確かめていきたいのです。もちろん、願書への取り組み方は、学校が定めるルールを尊重します。
書き出せずにいるときは、最近のお子さまの出来事を、一つ思い出してみてください。
「そういえば、こんなことがありました」
いつも一緒にいるからこそ、見過ごしている成長もあります。
その何気ないお話の中に、願書で伝えたい宝物が隠れているかもしれません。

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